星新一 一〇〇一話をつくった人 [☆☆☆☆☆]

星新一 一〇〇一話をつくった人

星新一 一〇〇一話をつくった人

買ったまま長く読めていなかったが、やっと読了。もっと早く読んでおけば良かった。
星製薬の跡継ぎだった事なんか知らなかったし、そもそも星製薬って会社自体知らなかった。
江戸川乱歩小松左京筒井康隆手塚治虫藤子不二雄たちとの関係も知らなかった。
苦悩を続けていたことも、原稿を直し続けていたことも、そして亡くなられたのが結構最近だったことも。何にも知らなかった。
って事を、はじめて、知った。

遍歴

俺は小学校中学年くらいで「おーい、でてこい」を読んでからだったか、「おくりもの」を読んでからだったか、きっかけはもう覚えていないが、この人の本は読まないといけない、と思ったのが最初。78年生まれだから、80年代後半かな。
小学生だったのでお小遣いなんてたいしてない。古本屋で、100円から 200円くらいで、新潮文庫の作品を片っ端から、買って、読んだ。親に怒られながら、布団の中でも、暗い明かりの中で読んだ。小学生だった間に、それまでに出ていた星新一作品はほとんど読んだと思う。ただし、ショート・ショートに限っての話。「明治・父・アメリカ」なんてのは俺には読みこなせなかった。
中学に入った頃からは悪いことに (?) マンガを覚えた。それまでは毎週ジャンプの立ち読みで「奇面組」を読むか、歯医者や中華料理屋で「あさりちゃん」や「ミスター味っ子」を読む程度だった。(だから、同世代の多くが読んでいる「北斗の拳」「キン肉マン」「アラレちゃん」などは読んでいなかった)。また、いったん星新一は読み終えた、と思っていたので、本屋に行っても探すことはなくなっていった。そうか、今思えば、「星新一ってまだ生きてるの?」って思ってたのかもしれない。
2003年末、メキシコに旅行に行った。初めての海外旅行だった。メキシコシティの日本人が運営している宿に泊まったが、そこの本棚に「進化した猿たち」があった。読んだ。おもしろかった。たしかこれも、小学生だった頃の俺には読めなかったものだと思う。古本屋でぱらぱらと見て、「何か違う」と飛ばしたんだったと思う。10年の時を越えて、また星新一に触れた瞬間だった。そして、今思えば、その 10年の間に星新一は亡くなっていたのだ。
数年前、既に就職していた俺は愛知から東京に出張に行ったとき、星新一作品を見かけた。それはマンガ化されていた(コミック☆星新一午後の恐竜)。迷わず買い、すぐに読んだ。何という偶然か、次の出張の際に同じ本屋で、またマンガ化されている本を見かけ、もちろん買った(コミック☆星新一空への門)。そのとき、星新一の新作集も出てる、と思って手に取ってみたが、それは「あのころの未来―星新一の預言 (新潮文庫)」だった。買わなかった。
2004年冬、星新一作品がアニメーション化され、ネット配信された。Yahoo! 動画だ。もちろんすべて見たし、wmv で保存した。いまも HDD に残している。この頃、(ほぼ) 全集として「1001」編が編まれた本が出ていることを知った。98年に出ていたんだな。でも、定価 3万は買う気にはならなかった。時あたかも、俺の部屋に積ん読の本があふれていた頃だった。
去年、2007年、この本を手に取った。「星新一 一〇〇一話をつくった人」。「本の雑誌」で紹介されて知ったんだったと思う。本屋に Oracle の参考書を買いに行った際、目についたので購入。そのまま 1年と半年、積んだままにしてしまっていた。
8月、引っ越したときに「あぁ、これ読まなあかん」と思い、やっと 11月末から読んだ。読み始めたら一気だ。作者さんの筆力、文章力もあるが、そもそもの星新一の人生が (不謹慎かもしれないが) 面白いのだ。(もちろん、それすら作者さんの取材のたまものだと思う。)

感想

俺が小学生くらいに星新一を呼んでいたことは、親はもちろん、担任の川粼先生もご存じだった。就職して実家を出ているが、実家から「もうあんたの荷物処分していいか?」と言われても、「本は捨てんといて」と言うし、「星新一はまた読むから」と言った。父親は、「もうあんなん読まんやろ」などと言うが、「いいから置いておいて」と突っぱねた。それは、正しかったんだと思う。
たぶん今、「ボッコちゃん」や「おーい、でてこい」、「エヌ氏」シリーズなんかを読んでも、また楽しめるだろう。捨てずに正解だ。
また、今なら「進化した猿たち」や「明治・父・アメリカ」なども興味深く読めるんじゃないかと思う。

これから

たぶん、もういちど、むさぼるように読むと思う。1001編集も欲しいが、まずは実家に置いてある文庫本からかな。通勤で読めるし。
あのころの未来―星新一の預言 (新潮文庫)」」も、たぶん読むだろう。文庫に入ってて、読みやすくなってる。
ほかにも、1001編に漏れた作品を集めた、「気まぐれスターダスト (ふしぎ文学館)」も、きっと買っちゃうだろう。何しろ、既にアマゾンのカートに入っている。子どもができたら、是非読ませたい。

関連

星新一 ショートショート1001

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あのころの未来―星新一の預言 (新潮文庫)

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気まぐれスターダスト (ふしぎ文学館)

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むすび

今更で申し訳ないですが、星新一先生に、合掌。あなたは、私に読書の楽しさ、すばらしさを教えてくれた方です。