危機に瀕するIT業界の「モラル」

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/OPINION/20060529/239294/

A氏は参加プロジェクトにおいて,協力会社からシステム子会社について相談を持ちかけられるケースが多いという。「最初は一生懸命に仕事をしようと思っていた協力会社の社員も,発注側がいい加減だとだんだん投げやりになる。発注側のモラル欠如が受注側に伝染するという『負の連鎖』が発生するわけです。この状態で品質の高いシステムを作れといっても,なかなか厳しいですよ」。

これは言える。仕様がどんどん変わる、昨日と今日で言うことが違うなんて、よくある。ほんとに。

ある病院が電子カルテ・システムの開発を中堅システム・インテグレータに依頼した。同病院でシステムを担当するB氏は,インテグレータのエンジニアの一言にあぜんとした。「テスト仕様書ですか? 書いたことがありませんし,お客様にお出ししたこともありません」。
驚いたB氏が,「では,どのようにテストするんですか?」と聞くと,エンジニアは「テスト手順を考えて実行し,その結果を目で確認します」と,平然と答えたという。B氏がさらに問いただすと,このエンジニアはテストやデータ移行,システムの本番環境への移行など,システム開発の要所での作業手順書や仕様書を,全く作成したことがなかった。

これは、モラルの問題ではない。契約の問題、あるいはその会社自体の仕事の進め方の問題だ。(大きい意味での「会社のモラル」に含まれる、といえばその通りだと思う。)

「こちらでもテスト手順を確認したいから,仕様書を作って持ってきてほしい」。B氏がそう言うと,「ドキュメントを作るのに手間がかかります」,「プログラムを作るのが我々の仕事。そちらが優先です」などと言い訳をする始末だったという。

この言いぐさはあまりにひどいが、「仕様書を持ってこい」って言うのも乱暴だ。客に出せるレベルのドキュメントとしての仕様書を作るのと、社内でテストをするための仕様書ではものが違う。契約内容の中で納品物として謳われていないなら、社内資料としては十分ではあるものの客先に出せるレベルのクオリティには仕上げていないことは多い。
俺がここで言っているのは、内容の話ではなく、体裁の話であって、「仕様書を作らない」ことを擁護しているわけではないので念のため。